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東京高等裁判所 昭和63年(行ケ)299号 判決

一 請求の原因一ないし三の事実(特許庁における手続の経緯、本件発明の要旨及び審決の理由の要点)については、当事者間に争いがない。

二 本件発明の目的、構成及び効果

前記争いのない本件発明の要旨に、成立に争いのない甲第二号証(本件公報)を総合すると、本件発明は、結合部を頭部に挿通する際に挿通孔のいずれの方向からも挿通でき、如何なる使用条件下でも極めて便利に能率良く使用できる両方向挿通可能な封緘具であつて(本件公報二欄三六行ないし三欄四行)、構造が簡単かつ小型化され、係止作業等の取扱いが容易であるうえに、簡単なモールドにより安価に大量生産できる合成樹脂製の封緘具を提供すること(三欄五行ないし八行)を目的として、特許請求の範囲に記載されたとおりの構成を採用したものであること、本件発明に係る封緘具は結合部の後端に突設した係止突片を頭部の挿通孔に挿通し、環状固定歯の係止面に係止するものであることから、本件発明の構成要件のうち、特に、「挿通孔内部に挿通孔と同一の軸線を有する案内面と軸線に垂直な二つの環状係止面を有する環状固定歯を設けた」構成(b)と「結合部には該結合部の後端方向に延びる係止突片を一体的に突設し」(構成e)、「この係止突片は、挿通時には固定歯の案内面に圧迫され、挿通後は遊離状態に拡大するように弾性的に揺動できるようにした」構成(f)とに構成上の特徴点があるものと認められる。そして、右の係止突片について構成(f)が「挿通時には固定歯の案内面に圧迫され、挿通後は遊離状態に拡大するように弾性的に揺動できるような」ものとした技術的意義は、係止突片自体が弾性を備えたものであり(前掲甲第二号証・本件公報四欄三三行)、かつのちに環状係止面との協働関係について認定説示するところから明らかなとおり挿通孔を通過するときには第5図にみられるように頭部の幅の中に納まつて通過し、挿通後は遊離状態になつて軸線に垂直な面と接触するまでに拡大することができるものとしたこと、つまり、係止突片自体が弾性的な揺動体として軸線に対する自由な角度を取り得るものとした点にあるものと認められる。

ところで、本件発明に係る封緘具は頭部と結合部とが一体に結合されてはじめて封緘具としての機能を奏するものであるから、頭部の挿通孔内における環状固定歯と結合部の係止突片とが相互に協働し合つてその目的とするような挿通及び係止の機能を奏するものであることも明らかである。したがつて、本件発明の構成及びそれを採用したことによる作用効果を認定評価するに当たつても、構成要件(b)に規定された環状固定歯の形状と、構成要件(e)の結合部の係止突片が構成要件(f)に規定されたように「挿通時には固定歯の案内面に圧迫され、挿通後は遊離状態に拡大するように弾性的に揺動できるようにした」構成とは一体不可分の関係にあるものとして一体的に評価判断されるべきものである。

更に、本件発明の奏する効果についてみるに、前掲甲第二号証によれば、本件明細書(本件公報九欄二二行ないし三九行)には本件発明の効果として、<1>「結合部を挿通孔に、前後いずれの方向からでも挿通できるばかりでなく、二つの環状係止面を有する環状固定歯を設けたことにより、前後夫々の環状係止面上のどこにでも結合部の係止突片を係止させることができる。したがつて、本発明の封緘具は全くの無方向性であり、結合部の挿通方向を確かめる必要は全くなく、如何なる作業条件下においても容易に、かつ能率良く作業を行なうことができる。<2>しかも、本発明の封緘具は単に結合部を挿通孔の中に差し込むだけで確実に係止でき、極めて迅速な係止が可能である。<3>また、本発明の封緘具は、特に頭部の挿通孔の内部に環状固定歯を設けただけなので構造が極めて簡単であり、容易に小型化することができ、しかも強力な係止が行なえるので、取扱いや生産が極めて容易となり、シールとしても使用することができる。」との記載のあることが認められる。

右認定に係る本件明細書の記載をみると、本件発明の右の効果は主として環状係止面を有する環状固定歯を設けたことによる作用効果として記載されているようにみられるが、前述のとおり封緘具は環状係止面を有する環状固定歯と結合部に一体的に突設された係止突片とが相互に協働することによつて封緘具としての機能を奏するものであるから、本件発明の右の作用効果は、環状固定歯と係止突片とが相互に協働したことによる効果、すなわち構成要件(b)及び(e)(f)の構成を相互に関連させ、協働させたことによつてはじめて達成されるものであることは明らかである。したがつて、本件発明において、構成要件(b)として、「挿通孔と同一の軸線を有する案内面と該軸線に垂直な二つの環状係止面を有する環状固定歯を設けた」構成を採択した意味も、構成要件(e)により結合部に一体的に突設され、その後端方向に延びる係止突片が、構成要件(f)で規定したように「挿通時には固定歯の案内面に圧迫され、挿通後は遊離状態に拡大するように弾性的に揺動できる」ように構成されたことと関連させて理解されなければならないものである。

これを具体的に述べれば、結合部に一体的に突設され、その後端方向に延びる係止突片は、挿通時には固定歯の案内面に圧迫され、挿通後は遊離状態に拡大するように弾性的に揺動できる構成になつていることによつて、挿通孔を通過するときには軸線にほぼ平行になつて、その外部形状を効率良く縮小し、その結果として、その係止突片を案内する環状固定歯の案内面の径を小さくすることができ、頭部の寸法も小さくなり、これによつて係止突片自体も係止面とともに小さくできることになるから、封緘具を使用する対象商品が小さなものであれば、これに相応しいように封緘具全体を小型化できるという効果を奏することになる。また、係止突片は挿通後は直ちに遊離状態に拡大するように弾性的に揺動できる構成になつており、これと協働して係止機能を奏する環状固定歯は「軸線に垂直な二つの環状係止面」を有していることによつて、係止突片が軸線に垂直な環状係止面に支承され係止されることになるので、係止が容易に、かつ強力に行える(係止突片を係止し得る程度の係止面があれば十分であると認められる。)ことにもなるものである。そして、本件発明の構成要件(b)に規定された案内面及び環状固定歯と、構成要件(e)(f)に規定された係止突片とは前記のとおり協働し合い、これによつて前記の効果も達成されるものである。このことは、前掲甲第二号証(本件公報)の発明の詳細な説明欄にまず、結合部が挿通孔を通過するときの相互の関連性について「中間部2をループ状に曲げて該結合部8を挿通孔5に挿通すると、結合部3は挿通孔5内を案内される。そのとき、頭部1の寸法をできるだけ小さくする等の必要上、固定歯6の案内面7c(第2図)部分における挿通孔5の内径は結合部3の拡大部8の外径とほとんど同じ位に作られているので、拡大部8がこの部分に挿通されるにつれて、係止突片9は第5図に示すように案内面7cと当接して挿通孔5の軸線方向に圧迫され、その状態で案内面7cに沿つて円滑に案内される。」(本件公報五欄二二行ないし三一行)と記載され、また、結合部が挿通孔を通過して係止突片が弾性的に遊離状態に復元した後の係止突片と垂直な環状係止面との相互の関連性については「係止時に結合部3を挿通方向とは逆方向(たとえば第6図のA方向)に力が加えられると、係止突片9は第6図のようにその後端が係止面7aと接触した状態でその力に抵抗し、封緘具の通常の使用時に加えられる力に対しては第6図の状態のままで十分に耐えることができる。……仮に特別大きい引張力が封緘具に加わつたとしても、係止突片9は第9図に示すようにほヾ直線状になるまでその拡大部8との接続端付近で屈曲して係止面7aと面接触する状態でこの引張力に耐えることができ、この状態でも拡大部8の後端面はまだ係止面7aよりも先端側に位置している。」(五欄四四行ないし六欄一五行)と記載されていることによつても裏付けることができる。

三 取消事由に対する判断

原告は、審決が「封緘具の小型化」の効果を根拠として本件発明の進歩性を肯定した点の誤りを主張し、第四引用例のとめ輪も小型化できる構成を有するものであるのに、第四引用例のものにおいては本件発明の達成した封緘具の小型化の課題が未だ解決されていないとした点の誤りを主張するとともに、審決が右の小型化の点を構成要件(b)の効果のごとく認定説示した点の誤りを主張するので、まず、第四引用例のとめ輪の構成の点から検討することとする。

1 原告は、第四引用例のとめ輪における矢状の差込体の「側部突起99´」は固定歯の間の狭い通路を通過するときに内側に折り曲げられ、通過し終ると、第5図に示されたように元の形に開いて固定歯と噛み合い係止するものであるから、本件発明の(f)の構成要件をすべて充足する旨主張する。

第四引用例(特開昭五三―一四九九号公開特許公報)に、審決認定のとおり「長方形の角孔を有する角筒体で、相対する短幅側壁の中央部につばめの尾の形をした突起を係止部として設けている受取体に対して、該受取体の角筒体の外側壁に垂直に取り付けられたロツドの他端に取り付けられた矢状の差込体を、受取体の開孔のいずれからでも差し込み係合できるとめ輪」が記載されていることは、原告も認めるところであり、右の開示事項と、成立に争いのない甲第七号証(第四引用例)の記載を総合すると、第四引用例の側部突起は先端部(以下「差込体」という。)2の先端7と一体となつているとともに、アーム部8の中央部分の幅が狭められた部分と角度αをもつて分離している傾斜面を有しており(第2、5図参照)、この傾斜面は係止時に受取体3の突起66´の傾斜面と係合して係止作用をするものであるから、右の側部突起は、係止時、軸線方向に力が加えられる場合があつても、その係合による係止を保持するために、その角度αが変化しないような曲げ強さを有しているものであると理解される。このように第四引用例の側部突起は、傾斜面との係合関係からして前記の角度αを容易に変化させるものであつてはならないから、本件発明の係止突片のようにそれ自体が弾性的な揺動体として軸線に対する角度を自由に変え得るものとは異なる。また、別紙図面五によれば、第四引用例には差込体2のアーム部8の中央部分のほぼ全長に亘つてスリツト12が延設されていることが認められるところ、前掲甲第七号証によれば、第四引用例には、右のスリツトの機能に関し、「アームを貫通したスリツトを備えており、これにより先端部に比較的大きい可撓性または曲げ性が与えられるとともに、……ヘツド・ピースの先端部がつばめの尾の形をした突起を通過せしめる働きをすることを特徴とする……保証とめ輪」(二頁左上欄八行ないし一四行)や「スリツトあるいは開口が設けられているおかげで、歯状のとがつた側部突起9と9´は、先端部7がつばめの尾の形をした突起6と6´を通過することができるよう、押圧してへこまされる。」(三頁左下欄一六行ないし一九行)との記載のあることが認められる。別紙図面五と右の記載によれば、第四引用例においても、差込体2の挿通時において側部突起99´が受取体の突起66´の案内面に当接し圧迫されるものであるが、前記のように側部突起99´が一定の曲げ強さを有する関係上、右案内面を通過させるための工夫として、通過の際、一時的に側部突起99´の幅を通過に必要な限度で縮小し、通過後これを復元させるためアーム部8の中央部分のほぼ全長に亘つてスリツトを設けた点を特徴としたものであることが明らかである。したがつて、第四引用例のものにおいては差込体を挿通させるためにはこのスリツトを設けることが必要であり、この点において本件発明の係止突片がそれ自体の弾性により固定歯の案内面に当接して圧迫されながら挿通するものとは異なつている。したがつて、第四引用例に本件発明の構成要件(f)の規定するような係止突片が開示されている旨の原告の主張(原告が主張するように、審決においても、右の構成要件(f)が第四引用例に開示されているとは認定されていない。)は採用できず、これを前提とする本件発明と第四引用例のとめ輪との相違点及びその相違点のみを前提とする進歩性否定の主張も肯定できないものといわざるを得ない。そして、第四引用例においては、スリツトの幅が、結局突起66´の案内面を通過する際の差込体の縮小し得る程度を規制することになるとともに、このような幅のあるスリツトを設けることが、差込体自体の小型化、ひいては封緘具全体の小型化を妨げる要因となつているものと認めることができる。

そうであれば、のちに詳述するように、本件発明における封緘具の小型化の課題及びその解決手段についての説示が構成要件(b)のみに関連づけて説示している旨主張される余地を残した点で適切な説示ではなかつたとしても、審決は、第四引用例のとめ輪について差込体のアーム部に貫通したスリツトを設けたのも、挿通時に側部突起に可撓性又は曲げ性を与えるためであり(審決が「係合時」というのは、挿通する時のことと理解される。)、この差込体のアーム部に貫通したスリツトを設けた構成が、結局全体として大き目とならざるを得ないものとしている旨認定判断しているのであるから、審決には第四引用例の構成について原告主張のような誤認はない。

2 ところで、原告は、封緘具は結合部をつまんで頭部に差し込み挿通させるものであるから、指で持ちやすい大きさであれば十分であつて、それ以上小さくすることは無意味であり、その程度の小型化は第四引用例のものでも実現されている旨主張する。しかしながら、本件発明が構成上第四引用例のものに比してより小さな封緘具を実現できるものであることは前記認定説示したところから明らかであり、かつ次にみるような封緘具の使用態様を考えれば、本件発明が課題の一つとした小型化を達成したことには大きな意義があるものと認められる。すなわち、前掲甲第二号証によれば、本件明細書には、「一般に、この種の合成樹脂製封緘具は商品への値札やラベル付け……等に利用されており、その利用範囲はさらに増加しつゝある。合成樹脂製封緘具がこのように広く利用されている大きな理由は、それらの封緘時の結合力の強さの他、たとえば商品へ値札やラベルを取り付けたりする際の取付け等の取扱いが従来の糸等を用いる取付法よりも簡便であることにあるものと考えられる。」(本件公報二欄二行ないし一二行)と記載されていることが認められる。

右の記載のうち、「たとえば商品へ値札やラベルを取り付けたりする際の取付け等の取扱いが従来の糸等を用いる取付法よりも簡便であることにあるものと考えられる。」との部分は、直接的にはラベル等の取付けについて合成樹脂製封緘具と糸による取付法を対比し、前者がより簡便であることを記述したものであるが、封緘具が比較的小さい商品を含む広い範囲に亘る種々の商品に利用されている実情に鑑みれば、右記載部分は、本件発明が糸と同じような細さの小型化された合成樹脂製封緘具の実現を意図したことを窺わせるものということができる。そして、本件発明は、前記認定のような頭部と結合部との構成を採用したことによつて、商品への値札やラベルの取付けに用いても、十分「従来の糸」に代わり得る程度の小型の封緘具を実現したものである。原告が、指で持ちやすい大きさであれば十分である、という具体的な大きさは必ずしも明らかではないが、封緘具を用いる対象である商品が小さいものであるときには、挿通操作の簡便さを犠牲にしても、より目立たない小さな封緘具を使用する必要のあることも容易に推測される。そして、第四引用例のとめ輪は前記認定のような構成であり、特に、側部突起自体は曲げ強度をもつものであることから、差込体を挿通させるために差込体にスリツトを延設した構成とした関係上、右スリツトの機能を生かすためには、差込体がある程度の太さを必要とすることは明らかであつて、到底糸のように細いものにスリツトを設けることは不可能である。このように、第四引用例のものにおいては、封緘具を従来の糸に匹敵する程度に小型化することは到底期待できないところである。このほか、原告は数値を挙げて第四引用例記載のものも本件発明同様小型化が可能である旨主張するが、右主張には実験的裏付もなく、前記のように第四引用例の側部突起には、本件発明の係止突片に比し曲げ強度が要求されるのであるから、必ずしも原告の主張する計算通りに小型化が実現されるものとも限らない。

また、原告は、本件発明の係止突片9は係止面と係合して引き抜く力に耐える必要があるから、封緘具として余り小さくすることができないと主張する。

しかし、前記のように第四引用例のものにおいては、差込体がスリツトを備える関係上、これを糸のように細くすることはできないという本件発明にはない構造上の制約があることからみて、原告主張のような本件発明における係止突片の挿通後の機能を考慮に入れても、第四引用例のものに比し、本件発明の方が顕著なものとして小型化の効果をもたらすことができるというべきである。

したがつて、小型化の課題や大きさについて本件発明と第四引用例のものとを同一視する原告の右の主張は採用できない。

3 右のとおり本件発明は、構成要件(b)(e)(f)に規定した環状固定歯とこれに係合する係止突片とを協働的に作用させて係合させる構成を採択することによつて挿通操作の簡便さを達成させながら、課題の一つとした封緘具の小型化という効果を実現したものであるから、この点は、充分に本件発明の進歩性の根拠となり得る事項であると認められる。確かに、争いのない審決の理由の要点4(二)(1)をみると、審決は、構成要件(b)について各引用例の記載を検討した箇所において、本件発明の封緘具の小型化という効果に言及して、本件発明の構成要件(b)における環状固定歯の係止面と第四引用例のとめ輪における傾斜した係止面の違いを封緘具の小型化という効果に結び付けているように説示しているようにも読めるが、審決は、第四引用例について「係止部に係止される差込体は、傾斜している係止面に対応する矢状形状の側部突起を有するものであり、……差込体のアーム部に貫通したスリツトを設けることを具体的に示していることからみると、該差込体と受取体とよりなるとめ輪は、全体として大き目とならざるを得ないものと認められる」として本件発明の構成要件(e)(f)に対応する差込体の形状を前提とし、この差込体が受取体に一体的に結合されてとめ輪としての機能を奏するものであることを当然の前提として、この差込体の大きいことがとめ輪全体を大きなものとせざるを得ない旨判断しているものと充分に理解できる。したがつて、本件発明の封緘具の小型化という効果も、構成要件(b)と(e)(f)に規定された環状固定歯と係止突片とが協働して作用することに基づく事項であることは当然のこととし、いずれの引用例にも開示のない構成要件(b)に関連づけて説明し、これと構成要件(e)(f)の規定する係止突片の協働作用について言及がなかつたにすぎないものと認められる。したがつて、本件発明の封緘具の小型化という効果を構成要件(b)のみに由来するもののごとく説示したとする原告の主張は審決を正しく理解しないことによるものであつて、採用の限りでない。

4 成立に争いのない甲第三号証、同第五号証、同第六号証、同第八号証を検討しても、第四引用例以外の各引用例に、構成要件(b)(e)(f)に規定した環状固定歯とこれに係合する係止突片とを協働的に作用させて係合させる構成が開示ないし示唆されているとは認められない。したがつて、右各引用例をもつてしても、右のように環状固定歯と係止突片とを協働させて係合させる構成を採用し、これによつて封緘具の小型化を実現し得るという効果を容易に想到し得るものとは認められないので、本件発明の進歩性を否定することはできない。

右のとおりであるから、請求人(原告)の主張する理由及び証拠方法によつては、本件発明の特許を無効とすることができないとした審決の判断は正当であつて、審決にはこれを取り消すべき違法の点はない。

四 以上のとおりであるから、その主張の点に認定判断を誤つた違法があることを理由に審決の取消しを求める原告の本訴請求は、理由がないものとして、これを棄却することとする。

〔編注1〕本件発明の要旨は左のとおりである。

(a)挿通孔を持つ頭部と、この頭部の側面から延長する中間部と、この中間部の先端に形成され、上記挿通孔に挿通して係止される結合部とからなり、全体が合成樹脂で一体に成形された封緘具において、

(b)前記挿通孔の内部には該挿通孔と同一の軸線を有する案内面と該軸線に垂直な二つの環状係止面を有する環状固定歯を設け、

(c)前記結合部は前記挿通孔にいずれかの方向からでも挿通可能であり、

(d)前記中間部はひも状であつて前記軸線に対して垂直に延びており、

(e)かつ結合部には該結合部の後端方向に延びる係止突片を一体に突設し、

(f)この係止突片は挿通時には前記固定歯の案内面に当接して前記軸線方向に圧迫され、挿通後には遊離状態に拡大するように弾性的に揺動でき、

(g)係止時にはこの係止突片を上記固定歯のいずれか一方の環状係止面で支持して係止することを特徴とする封緘具。

(aないしgの符号は便宜上付したもの)(別紙図面一参照)。

〔編注2〕本件における図面は左のとおりである。

図面一

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図面五

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(他は省略)

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